ひさしぶりに成田空港へ行ってきた。
ヤボ用でね。
ニュースのとおり、いましたよ、居残り。
飛べたてない方々、20人ぐらい。
床に寝転がっているのかと思ったら、椅子に座っていました。
シンドそうな状況かと想像していたら、意外と快適そう。
いや、快適と言ったら怒られるが、
なんたって外が寒いから、温かいだけマシかと・・・
昔、若いころの話。
ニューヨークのPort Authorityというバスターミナル。
朝5時15分発のバスに乗る予定があり、
寝坊が心配だったのと、宿代の節約の一石二鳥を思い立った。
11月のニューヨークはすでに相当に寒く、
バスターミナル内では待合所だけが唯一温かかった。
夜10時ごろまでは普通に込んでいたターミナル内も、
徐々に人影がまばらになってきた。
12時過ぎにその日の最終バスが出て、待合室の中は数人を残すのみになった。
その数人のうちのひとりが自分だ。
消灯し、静まりかえった待合室。
椅子に座り、じっと目を閉じていた。
午前1時を過ぎたあたりから、徐々に人の気配がし始めた。
始発バスの利用客にはまだ早過ぎる時刻。
目を開けるといつのまにか待合室の全席がうまっていた。
明らかに旅行者とは思えない風情。
ホームレスが集まってきたのだ。
とんでもないことになってきたな、と思いつつも目が合えば会釈。
声は出さずクチビルの動きだけで「ハ~イ」と。
彼らにしてみても、普段見かけない怪しげな東洋人。
警戒感が表情に表れていた。
人数が増えた待合室で、身を縮めながら、眠りに落ちていった。
ガン ガン ガン
いきなりの大音が耳をつんざいた。
生易しい音量ではない。
その不意打ちに身体か凍り付いた。
一瞬で覚醒、眠気はすっとんだ。
戦場はこんな感じなのか・・・なんてことは後になっての思い出話。
電気が一斉に点いた。
目の前に警察官が4、5・・・6人。
プロレスラーもどきのばかデカい男が大声で怒鳴っていた。
金属製ダストボックスを警棒でたたく男もいた。
ガン ガン ガン
名目は不法侵入者の排除。
容赦なしだ。
ボクは首根っこをつかまれた。
あろうことか巨漢の婦人警官に。
「違う、自分はホームレスではない。旅行者だ」
あわててバッグからパスポートを取り出そうとした刹那、
Don’Move! Stay there! 指差しで怒鳴りつけられた。
まずい!
そうなんだ、ここは銃の国だ。
あやしい動きが命取りになる。
それが頭をよぎった瞬間、全身を恐怖心が駆け巡った。
フリーズするしかなかった。
息をするのも躊躇われるほどに、固まった。
巨漢の白人警官と目があった。
刺激しないよう、ボクは卑屈な態度で訴えた。
自分は善良で無垢で気だてのいい、か弱い日本人旅行者であると、
トヨタもダットサンも、ソニーもパナソニックも日本製だと、
ちょっと早めに来過ぎたが、朝5時のバスを待っているんだと・・・
巨漢が睨みつけるようにして言った。
「いいから出て行け~!」
イエッサー!
待合室はあっという間にカラに。
時計は4時少し前をさしていた。
外は厳寒。
さすがに真っ暗闇の42丁目付近を歩く気にはならず、しばらくターミナル内をほっつき歩いた。
30分も歩いただろうか、待合室近くに戻ってきていた。
あたりは静まりかえっていた。
なにげなく待合室をのぞくと、なんてことだ。
追い出されたはず連中が、ちゃっかり元の席に座っているではないか。
なるほど~、そういうことか。
ボクもすかさず元の席に戻った。
目だけで周りに会釈。
ザマ~みやがれ!
声に出して叫びたい想いがこみ上げたのだった。
成田空港のホームレス、いや、間違った。
外国人旅行者たちを眺めながら、昔のできごとをつかの間想い出した次第です。
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