所沢インターを下りた途端、青空が煤けて見え、焦げ臭い匂いを感じ、
通販会社の倉庫が火災に遭っていることを思い出した。
アスクルの倉庫と目と鼻の先にある霊園墓地。
墓前で手を合わせる親戚連中を眺め、浮かんだやるせない思い。
「困ったもんだ、正男と正恩」
どうして仲良くできないんだ、草葉の陰でオヤジやオフクロが泣いてるぞ。
遺産相続、跡目相続・・・
なにを取り合っているのか、なにが気に入らないのか知らないが、長男と三男とのもめ事。
「長男のくせに勝手気ままに生きやがって。面倒くさいことは全部オレに押し付けて」
跡を継いだ三男がハッピーで、継がなかった長男がアンハッピーだったのかどうか。
どちらがどうだと、言い切れないような気がする。
「あなただったら・・・?」
アンケートがあったら、オレなら間違いなくマカオ暮らしを選ぶ。
所沢の霊園墓地にも、焦げ臭い匂いに混じって微妙な空気が漂っていた。
しかし、マサオだ。
もう表記の段階で親しみが湧いてしまう。
「ジョンナム」だとはわかっているが、マサオと読めてしまうところが高ポイントだ。
日本国で面倒見てやればよかったのにという声があるが、異論はない。
「ジョンウン」の場合も残念だ。
母親が、大阪で生まれた女やさかい「これで青春も終わりかな」とつぶやいてくれたら、その境遇に同情していたかも知れない。
髪型も吉本の芸人っぽいなと笑ってすませたところだ。
今さらながらの話で、残念だ。
ともかく今回の件は、もろもろが想定外で、けっこう怖いことになってる。
ミサイルをハデに飛ばし、上空に注意を向けさせといて顔になにかを塗るというトラップ。
それをインドネシアとベトナムの普通っぽい姐ちゃんにやらせるという、おいおいフラッシュモブかよ、というパフォーマンス。
派手な武器は使わず、まるで化粧品かよ、と思わせる手のひらサイズのツール。
場所がKL空港のターミナルで、LCCのカウンター前で、それに真っ昼間というシチュエーション。
で、標的が、殺意を抱くのがけっこう難しい、愛くるしい表情のダディ。
これは暗殺なのか。
どこが「暗」なのだ?
やり方が意表を突きすぎていて、はなはだ腑に落ちないことが多すぎる。
今それをやってなにか得をするのか、ジョンウン・エンド・ノースコリア。
それとも本当はやっていないのか。
シナリオをあれこれ妄想しているのだが、深読みし過ぎで頭が痛いわ。
ところで、所沢の霊園墓地に漂っていた不穏な空気。
その理由はオレのひと言だった。
「いいね〜、おまえら。親がなにも残さないから奪い合うものがなくて仲良し。この幸せもの〜!」
次に狙われるのは、オレかも知れない。